がんになっても子どもは育つ6/29(日)チャイルドケモハウス主催のシンポジウム「がんになっても笑顔で育つ」にシンポジストとして参加し、「若者の心に火をつける ~なぜ高校生教育が大切なのか?~」と題した講演をしてきました。

冒頭の報告で、がんで惜しくも亡くなった久保田鈴之介君の物語が、両親から語られました。

実は、小中学校という義務教育段階では、院内学級のようなかたちで長期入院になっている子どもたちにも学習が継続できる仕組みがあるのですが、高校になると「義務教育でない」という理由で同様な仕組みがないのです。つまり、長期入院になってしまうと欠席扱いになり、進級できなかったり、中退を余儀なくされるのです。

そんな現状を変えたのは、ユーイング肉腫というがんで闘病生活を続けていた高校3年生の久保田鈴之介君。

友達の助けをかり、学校の授業をスカイプで中継してもらう取り組みをしたり、病院のなかでも授業が受けられるようにと橋下大阪市長にメールを送るなどして働きかけた結果、市長に思いは届き、そこからわずか2ヶ月で、先生が定期訪問するような仕組みができ、ほかの生徒と同様、卒業できることになりました。
 
そして、鈴之介君はセンター試験を受験。しかし、そこで命は燃え尽きた、とのことです。
http://www.nhk.or.jp/heart-blog/people/rfl/post_693.html

鈴之介君が橋下市長に送ったメールは、本当に的確に課題と解決策を伝えており、当事者だからこそ、説得力のある言葉、いや「政策提案」に、社会は即座に動いたのです。

しかもそれだけでなく、実際にその後できた、先生の定期訪問システムは、がんの治療中、その日によって体調は大きく異なり、せっかく前もって予定をいれていても、その日の体調が悪く、断らないといけなくなることが、非常に重荷になってしまうので、やはり、体調のいい時に受けられる院内学級のようなシステムがベターである、と追加での提案を送っていました。ほんとにすごい。

その後、大阪府が、現在実施している長期療養中の高校生へのサポートをどんなかたちで行っているかが語られました。

その後、登壇した私は、鈴之介君は、なぜ厳しい環境におかれても、 それにめげずにがんばり続けることができたのか?
からお話ししました。

10488294_659407474152273_1631639001033596969_nこのドラマに出てきた鈴之介君は、まさに「心に起動した状態」になっていた高校生です。
ここでもうひとつ気づくべきことは、心が起動した状態になるための前提となる環境要因。それは、

・剣道での経験(困難を乗り越えた体験→自己効力感) 
・寄り添う仲間・家族・居場所(挑戦を支える環境)
・具体的な目標・希望と達成への手段(大学受験と学習環境)

鈴之介君のように目標をもって行動する状態に、なれていない高校生はたくさんいます。
その高校生個人に原因を求めるのではなく、高校生たちの心に火がつく出会いや挑戦の環境をどう整られるかがカギであり、それは大人の責任である、という、趣旨の話をしてきました。 

長期療養中の高校生をサポートするシステムができたのは「大阪府」と「東京都」ぐらいで、ほかの都道府県ないそうです。学習の支援ですらできていないのだから、キャリア教育の支援などは頭にもありません。
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でも命の危機にさらされた子どもたちだからこそ、その後、どう生き抜いて行くのか?のキャリア教育が必要です。ガンを克服した後、就職活動では、ガンにかかってきた経歴が、採用のデメリットになるんじゃないか、と深刻に悩んだりするそうです。

病院にいる高校生にも目が届き、そっと、さりげなく、心に火がつく環境を整えてあげられる社会を創りたいですね。

自分の視界が広がる機会で、とてもたのしかったです。

社会イノベーター公志園で同期生のチャイルドケモハウスの楠木さん、機会を与えてくれてありがとうございまいた。