若者の心を起動する教育の作り方

アスバシ教育基金代表、毛受芳高のブログ

これまで1998年から15年、キャリア教育、街とつながる学校、総合的な学習の時間、教育コーディネーター、シチズンシップ教育、ESD、環境教育、国際理解教育、サイエンスコミュニケーション、教育CSRなどなど、様々な新たなテーマの教育を「教育コーディネーター」の側から手がけてきました。小学校から、中学校、高校、大学までの、子ども・若者のすべての発達段階と関わっていくなかで、見えてきた教育づくりのコツを紹介します。
若者は、「何か」に出会う体験を通して、心に火がつき、自ら主体的に動きだします。そんな体験を「心起動(ココロノキドウ)体験」(ユースアクティベーション)と呼んでいます。「心起動」現象はどう起こるのか?

2014年01月

2001年11月9日中日新聞「自分さがし~出会いと挑戦の機会を~」

毛受アーカイブスというのが、今回のブログのもうひとつのコーナー。
「30年はかかる」と思ってはじめた「教育を変える」のチャレンジも、あっという間に折り返し地点。これまで、いろんな場面で文章や論文、記事があります。

私が、思い、行動してきたことはこれまでにも変わらず一貫しています。そして、毎年毎年、活動しながらわかってきたことは、これまでにまとめた文章を通して、伝えられるものがあるとかんがえ、ボツボツ紹介していきます。

まずはじめに 紹介するのが、「中日新聞のひととき」というコラム。最初の第一回目の記事です。

今のように、キャリア教育という言葉が拡がっていない時に、自分の体験を踏まえてその意義をまとめています。アスクネットの理念にも入っている「出会いと挑戦の教育」は、このコラムからはじまっています。

自分探し~出会いと挑戦の機会を ~2001年11月9日中日新聞~

 「自分のやりたいことが見つらない」。私は高校三年の今ごろ、大学志望校選びで悩んでいた理系科目が得意だから何となしに埋系を選んでいたが、実際に志望校を選ぶ時になって、行き詰まってしまった。早々と志望校を決めていた友だちに選んだ理由を尋ねても「数学が得意だから」とか「ランクがちょうどいいから」など、表面的な選択ばかり。いろいろ考えても見つからないので大学時代に先送り。進路の選択の幅が大きい情報関係の学科を選んだ。

 そして大学時代、授業にもあまり出ずに、国際交流などのボランティア活動に打ち込んだ。その中でへ社会で活躍するさまざまな人と出会い、主体的に活動をじていく中で、自分の得意なこと、苦手なことが具体的に分かってきた。こうした試行錯誤の体験から、「自分がやりたいことば教育分野にある」と感じたが、時すでに遅し。教職免許が取れない学科だったのだ。高校時代にこの体験ができたら、と感じたものだった。
 
 振り返ってみると、社会で何がしたいのか、どんな人になりたいのか、そんな「自分探し」へのヒントを与えてくれたのは「さまざまな人と出会う」ことであり「さまざまなことに挑戦する」ことだった。そして、この「自分探し」が「何を学ぶか」の根幹を支える。しかし、これまでの学校教育を見たとき、さまざまな人との出会いも少なければ、規制が多くさまざまなことに挑戦できる環境でもない。いつの間にか、「学び」の根幹「自分探し」を置き忘れてしまったのではないか。

 今、日本の学校は変わろうとしている。知識偏重の教育から、自分の興味・関心を育てていく教育へとシフトが始まっている。それば、学校の中だけで学びが成り立つような閉鎖的な学びの環境から、学校を取り巻く街や地域の市民との触れ合いの中から、自分の興味・関心を発見し、学びを進めていく開放的な学びの環境に変えていく大きな挑戦だ。

 私たち愛知市民教育ネットは、この挑戦を市民の側から支援する非営利団体である。学校教育と市民をつなげ、生徒がさまざまな分野で生きる市民と触れ合う場づくりを推進している。

 子どもたちの「自分探し」、を助ける一人として、今こそ市民の出番だ。
 (愛知市民教育ネット代表理事)
 20011109自分さがし

教育投資が生む「希望の配当」と「安心のリターン」とは?

将来が不安だから、貯金をする。

それはそれで大事です。

でも、それだけで希望と安心はうまれるでしょうか。

「将来が不安だから貯金」とコツコツ貯金だけしていても、雀の涙のような利子しかつきません。2%や3%の利子がついた時ならいざ知らず、わずかばかりの利息からは希望なんてものは生まれません。

しかも、日本がこのまま財政赤字を続け、何かのきっかけで国債が暴落してしまったり、ハイパーインフレが起こって、お金の価値が暴落してしまったら、安心も希望もあったもんじゃありません。

「貯金がダメ」だと言いたいのではありません。不安だからと言って貯金ばかりをして、本質的な暮らしを支える「人」の問題の解決に着手しなければ、安心や希望を生み出さないということがいいたいのです。

わたしたちの本当の未来の安心と希望を形づくるのは「人」です。社会がどんな状況になろうが、そこから這い上がっていこうという意志をもつのも「人」。協力し合い、困難をのりこえるのも「人」。資源が全くない日本が、この世界を生き抜いてきたのも「人」の力です。

仕事を単に「お金をもらうための手段」と考えるのではなく、自立して生計をたて、自らの力で未来を切り開いていくのが「楽しい」、そして、人のため社会のために働くことが「やりがい」に思う、そんな若者を育てていくことが、「希望」であり、「安心」を生み出すのです。

もし、教育にお金を出し、その結果、若者が大きく成長するエピソード・ストーリーが生まれたとします。
このストーリーをきくと、「こんな若者がいるなら、未来も明るいな~!」と自然に感じます。

これを私たちは、教育投資に対する「希望の配当」と呼んでいます。高校生のインターンシップ報告会に参加した、市民の感想を紹介します。

「高校生の生の声を聞き、寄付させていただきよかったなと思いました。目に見えない宝物=(未来への投資)を手に入れた感じです。」
「昨日の報告会では、私自身、初めはわずかばかりの「寄付」をしたつもりで、参加いたしたが、逆にもっと大きな「希望の配当」を、いただいて帰ってきたような気がします。感動しました。」 

そして、その後、その若者が様々な経験をつんだ後に、社会で担い手へと育つ。担い手となった若者が、私たちの暮らしを支え、納税者となった若者たちが社会保障制度を支え、その制度によって私たちは支えられるのです。

この段階を、教育投資にたいする「安心のリターン」と呼んでいます。
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前の記事で、一人の若者がフリーター・ニートになってしまったら約5000万円が損失すると述べました。

これがもし、一人の若者に50万円をかけたとしたとき、その若者が担い手へと成長したとき、その投資は5000万円以上を生み出したということ。投資効果は100倍なのです。

このことに社会が気付き、ひとりひとりの若者に目をむけて、動き出すことが重要なのです。

一人の若者がフリーター・ニートになると社会はどれだけ損をするか?

いよいよ4月から消費税増税がはじまります。3%の増税で8兆円の税収が上がると謳っています。
 
しかし、次の数字をみてください。
今年度の生活保護費は約3兆7000億円で受給者は約209万人(152万世帯)
平成25年度には5兆2000億円へ増加。
総合研究開発機構(NIRA)によれば、「就職氷河期」に急増した非正規雇用の労働者が現在の低水準の賃金で、65歳以上を迎えた場合、77万4千人が生活保護受給者となり、そのための追加的な財政支出が20兆円にのぼる、と試算しています。
 
つまり、8兆円が増収になっても、そのお金は生活保護費に消えて言ってしまう恐れがあるということなのです。
もし若者達が、『もらえるもんは、もらっちゃおう』ぐらいの感覚で生活保護をとらえ、社会のシステムを誰が支えているかは無関心になってしまえば、どんな立派な社会保障制度をつくってもすべて崩壊してしまいます。
 
●一人の若者がフリーターになってしまった場合の社会的損失はどれぐらいか?
もし、一人の若者がフリーターになってしまったとき、税収(所得税・住民税・消費税他)という観点では、社会はどれだけの損失をしてしまうのでしょうか。

<社会人とフリーターの年間の納税金額の差(所得税・住民税・消費税他)>
ニート

年収360万円の社会人の納税金額  
=33万円
年収107万円のフリーターの納税金額
= 7万円
-----------
納税金額の差は 年間26万円

これがもし、大学卒業してから40年この差が続いたとすると・・・
26万円×40年=1040万円





実際は、年収格差はもっと開きますし、ニートはフリーターの納税額よりも少ないと考えられるので、ニートフリーターの平均でいけば、この損失額はもっと大きくなると考えます。つまり、ひとりの若者をフリーター・ニートにしてしまった場合、その社会は、将来にわたって最低1千万円の損失をするのです。


これに加えて、生活保護が40歳を超えてから30年間、支出したとします。

月10万円×12ヶ月×30年=3600万円。
合計4600万円

つまり、ひとりの若者がフリーター・ニートにしてしまうことは、合計で5000万円近くの損をしてしまうことになるのです。
もし、こうなってしまう前に、ひとりあたり50万円をかけてでも、止められたとしたら、 その50万円は100倍の投資効果を生んだと考えられます。これが、ひとつの教育投資としてのひとつの考え方なのです。

裕福な国の、貧困な教育のニッポン

そもそも教育とは国家的な事業で、もともと教育には大変な額の税金が投入されています。

<一年間に使う児童・生徒一人当たりの公的税負担>(平成20年度全国平均)
小学校  827,000円
中学校  957,000円
高等学校 918,000円

学校という施設をつくり・修繕する費用や、電気代や水道代、そして、最も大きいコストは先生たちの人件費。もし、税金投入がないとすれば、これだけの費用、月にすれば7~8万円は払わないといけないのです。

もし、そんなことになってしまったら、誰もが学校に行けなくなりますよね。
学校に行けない子どもたちは、生まれた地域・家庭におかれた教育力のみに依存し、未来への可能性を奪われてしまいます。だからこそ、日本は明治維新以後、国費を優先的に投入し、急速に学校制度を全国津々浦々に普及させていきました。それが、日本の今をつくってきたわけです。

たくさんの税金を投入すると言いましたが、世界の平均からいえば、実は日本はOECD諸国のなかで、教育にお金を使っていない、最も安上がりに済ませている国なのです。
20120524_1146430
 

対GDP比で3.3%しか、日本はお金をつかっていません。


日本は、GDP世界第三位の国ですが、教育費に使っている割合は世界最貧レベルなのです。

このことは教育を、私費負担に委ねる、つまり、教育にお金をかけるかどうかは家庭の経済事情に委ねるということになります。

(続く)

挑戦する若者を育てるには?

もし、あなたが子どもに「バク転」に挑戦させようとすれば、はじめからコンクリートの床の上で練習させるでしょうか。するわけがありません。

失敗しても、大きくケガしないクッションのある環境から初めて、だんだんうまくなって自信がついてから、アスファルトの上でもバク転ができる。


つまり、人が「挑戦」するためには、挑戦に慣れる「ホーム」といえるセーフティゾーンが必要です。
元気づけ、不安や痛みを解消できるクッション効果があるホーム、その挑戦が失敗しても戻ってこられるセーフティゾーンがあってこそ、人は挑戦する勇気を蓄えることができる。


それ加えて、様々なものとの出会いや外の世界からの誘いがけなどの「外界からの触発」。誘因や刺激があってこそ、人は挑戦するテーマを手に入れ、向かうことができる。

私たちは、若者達を挑戦者へと育てるための「ホーム」「外界からの触発」を十分提供できているのだろうか?

できていないのであるならば、「今の若者達はチャレンジしないんだよね~」なんていう批判はお門違い。

もし、自分の地域や会社に挑戦者が育たないということがあれば、この2つの要素をふんだんに子どもたちが育つ環境に埋め込めるか、である。

そして、様々な挑戦で痛い目に遭いながらも乗り越え、成長してきた若者は、いくらコンクリートのような厳しい場所でも、バク転に挑戦し、みごと成功させてくれるのです。

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