若者の心を起動する教育の作り方

アスバシ教育基金代表、毛受芳高のブログ

これまで1998年から15年、キャリア教育、街とつながる学校、総合的な学習の時間、教育コーディネーター、シチズンシップ教育、ESD、環境教育、国際理解教育、サイエンスコミュニケーション、教育CSRなどなど、様々な新たなテーマの教育を「教育コーディネーター」の側から手がけてきました。小学校から、中学校、高校、大学までの、子ども・若者のすべての発達段階と関わっていくなかで、見えてきた教育づくりのコツを紹介します。
若者は、「何か」に出会う体験を通して、心に火がつき、自ら主体的に動きだします。そんな体験を「心起動(ココロノキドウ)体験」(ユースアクティベーション)と呼んでいます。「心起動」現象はどう起こるのか?

ユースアクティベーション~若者の心に火がつく物語vol.3

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今回は、愛知県有数の超進学校、普通科に通う高校1年生男子のインターシップでの物語を御紹介。名古屋コンベンションビューロー(
http://www.nagoya-info.jp/ncvb/ )が運営する名古屋市の観光案内所に、5日間のインターンシップをしました。報告会当日も、高校1年生には思えない落ち着き、堂々とした話しぶりで、観客を驚かせていました。そんな彼も、現場にでれば一人の高校生。「案内がうまくできない」という壁にぶち当たりながらも、様々ないい気付きと成長を得て、その後の学校の活動に活かしていることがわかります。
そして、インターンシップ後、その体験をどう活かすかという
問いにこう答えてくれました。「この国のよさを世界中に発信したい」と。
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●聞きしに勝る「忙しさ」の観光案内所
8月19日、私は今回インターンシップ先の名古屋駅の観光案内所に向かっていました。でも、一点だけ不安なことがありました。それは行く前にアスクネットの担当や、受入先の担当の方に、「名古屋駅の案内所は忙しいよ。忙しい忙しい忙しい」とひたすら言われてこの日を迎えたからです。それで実際はどうだったか?観光案内所に到着して、数分後、既に一人の案内が始まる。そんな忙しい状況でした。

●「どんなお客様でも笑顔で対応する」課長さんの一言に感動!
最初から全ての案内がちゃんと出来ていた訳ではありません。最初は、というより最後まで、ずっと観光案内所のスタッフの方のご指導を仰ぎながらでしたし、自分の知識がないばかりにお客様にも様々なご迷惑をおかけしたかと思います。ただその分、名古屋だったり愛知のことしっかりと知識を吸収する、いい機会になったと思います。
しかし、それ以上に僕にはもっと学ぶことがありました。案内所の課長さんの一言です。「どんなお客様にも笑顔で対応する」という当たり前の一言。例え、どんなに忙しくても、たとえ相手がどんなに理不尽な文句をぶつけてきたとしても、たとえ相手が英語すら通じない外国の方であっても、ここに来る人はみんな等しくお客様だ。そして自分たちはこの街に来て一番最初に接する名古屋の顔だから。

●体験で得たことを高校生活に活かす!
僕は現在、1週間後に学校で開催する文化祭のための準備をしています。つい一昨日も同好会の展示発表で使用する、お客様対応マニュアルを作成していました。いつもなら僕がマニュアルを作るときは最後に、丁寧な接客をというフレーズを書いています。しかし今回はもう一単語つけることにしました。「笑顔で丁寧に対応すること」。もしかしたらその相手にとって自分が、学校に来て最初に接する高校の顔になるかもしれないから。
このインターンシップ、どんな高校生にもいい社会勉強になる、とは言えません。ですが、こうは胸をはって言えます。私にとっては得るものばかりの5日間だったと。

2001年12月29日 中日新聞ひととき 「市民講師」

今ではあたりまえのように学校で活用されている「市民講師」についての記事。
「ゲストティーチャー」とも呼ばれています。

この「市民講師」を、2002年からの指導要領改訂で導入された「総合的な学習の時間(総合学習)」にコーディネートをする事業が、NPO法人化したアスクネット(当時は愛知市民教育ネット)の原点。

この記事に書いた授業は、NPO法人化してはじめての講師派遣で、ギリギリまで講師が集まらず、困っていたところ、偶然、取材に来てくれたライターさんだった平田節子さんに依頼したことで生まれたエピソードでした。
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(黄柳野高校の当時。教室は木が新しい)

「来週、空いていませんか?黄柳野高校っていうステキな学校があるんですけど、そこで高校生に語ってくれませんか?」と無茶振りでの依頼で実現したのですが、平田さんとしては、その後1年以上講師ができなくなるぐらいショックと語るほどの体験だったそうです。

でも、この体験をきっかけに、平田さんはキャリア教育の世界にどっぷりとはまっていき、その後、経済産業省のキャリア教育事業をすすめていくのになくてはならないキーパーソンになっていくのです。
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当日の平田節子さん。超若い!一生懸命、ライターの仕事について語る。

ちなみに私も、2001年に起こった
9.11同時多発テロのについての講座で講師初登板。
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しかし、
パワーポイントを使って説明する予定がうまく画面が出ず、口頭で説明したので寝る人続出で講座としては大失敗!撃沈!

記事中に書かれた学習指導要領の改訂は「ゆとり教育」と呼ばれ、その教育を受けた世代を「ゆとり世代」と揶揄し、
教育改革の失敗扱いされています。

しかし、この記事で取り上げた「仕事に関する授業」は、
今では「キャリア教育」といって、新たな指導要領にもコンセプトが組み込まれています。それらは、その総合学習があったからこそ、学校のなかで拡がった。この総合学習がなければ、アスクネットは学校と連携はできなかったように思います。その意味では、「ゆとり教育」は、改革にむけての確かな一歩を踏んでいたのです。

市民講師~子ら生き生き"違う側面"======中日新聞2001年12月29日ひととき

 「学校に授業に行った翌日、私のところに生徒から一行のメールがきました。
『仕事のやりがいというのは後についてくるものだ、というのは、進路を決める上でとても参考になりました』と。
授業のなかでは、決してそのような表現は使っていなかったのに、私が授業の中で一番伝えたかったメッセージを彼はわずか一行につかみ、表してくれました。
だから、私は『あの話をこの言葉にできるあなたはすごい。あなたはきっと何をやってもできるから、がんばってね』と返事をしました。彼に、その一言を最後に投げ掛けられたことが大きな事だったのでは、と感じました」

 これは、普段は転職情報誌などでライターをしている市民が、黄柳野高校で講師として「仕事探し」をテーマに授業をした時の感想です。

 この学校では、愛知市民教育ネットが支援し、このとき初めて市民を招いての自由選択授業を行いました。ほかにもさまざまな市民講師による8講座が開講され、普段では出会えない市民から学ぶことで「生徒たちの違う側面が見えて大成功でした」と担当の先生。

 来年度から本格実施される新学習指導要領では、この事例のように市民参加の教育づくりが進められようとしています。これまでも先駆的に取り組んできた学校もありますが、これが日本全国の学校の課題となっていくのです。

 実際の生の体験を話し、子どもたちの心をワクワクさせることができるのは、その現実に身をおいている人をおいてはかにありません。話の稚拙よりも、新しい人との出会いとそこに生まれる現実感から、大人が思っている以上のメッセージを子どもたちは受け取り、自ら変わっていくのです。

 私たち愛知市民教育ネットは、子どもたちの多様な興味にこたえていくため、さまざまな職業・体験・技能をもった市民を登録、学校からの要請に応じて適した市民を講師として紹介する「市民講師ナビ」という事業を開始しました。

 「普段もている仕事を見つめ直すことができた」「今の子どもたちを理解するきっかけになった」など、市民講師になった市民からの反応も寄せられています。
 あなたも市民講師になってみませんか?

 (愛知市民教育ネット代表理事)

 第二回20011229市民講師

ユースアクティベーション~若者の心に火がつく物語vol.2

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今回は、農業高校の食品科学科に通う高校2年生の女の子が、洋菓子パリジャンパーペチュアル( http://parisian.jp/ )にインターンシップに行った時の物語です。パティシエなどの食に携わる仕事をしたい、という希望をもった生徒なので、とても姿勢も前向き。3日間のインターン内容は、お菓子・ケーキの包装、飾り付け、ケーキ材料の下準備、洗い物、接客等を行いました。

志望が明確で積極的な生徒は、インターンシップなんて必要ないという声も聴かれますが、そんなことはありません。むしろ、志望が明確であるからこそ、さらに深い気付きや感動、その後の人生につながるメッセージをつかんでいきます!↓↓↓↓↓↓↓↓

● 社員さんが丁寧に教えてくれた!
どのお仕事も従業員さんやアルバイトの方々が、丁寧に教えてくれて、出来なかった作業も、回数を重ねる内に出来るようになっていき、誉められた時はとても嬉しかったです。仕事を教えてくれているときに、社員の方が沢山話しかけて下さり、コミュニケーションをとることができました。だから、分からないことや、次に何をすればいいのかなど、自分から積極的に聞くことが出来きました。報告書のコメントに、よく動けている、意欲がある、お店に馴染めているね、と書かれたときは本当に嬉しかったです。

● 一つ一つのこだわりに驚かされた。
包装の作業では、お菓子やケーキの種類によって置く向きや使うフィルムの種類や、やり方等が違うこと。飾り付けの作業では、ケーキの種類によって使う具材の大きさが違うこと。材料の下準備では、桃のピューレだったら繊維を残したくないため、裏ごしをしてから使用したりと、一つ一つの作業にこだわっていること。など、仕事を体験している内に、沢山の驚きがありました。

● 店長さんから聞いた経営方針に感動
最終日に店長さんからお話があり、その中の経営方針に感動しました。お話しされた経営方針は三つありました。一つ目は作っている人も接客を必ずやること。これは自分の考えている商品と、お客様の考えている商品が違うため、両方やることでお客様のニーズに合ったいい商品を作れるようになるからです。二つ目はケーキの種類や焼き菓子の担当が特に決まっていないということです。これは全ての仕事をやってもらうことで、バランスよく技術がつき、将来的には一人一人にお店を出して欲しいという願いからです。そして私が一番印象に残っているのは、「みんなが仲良しじゃないと美味しいケーキは作れない、みんなで助け合っていかなくちゃ」という店長さんが言われたフレーズでした。ここのお店のスタッフのみんなが、仲良く仕事をこなしているので、雰囲気のいいお店になっているのだと実感しました。

● 挨拶・笑顔・素直に謝れる大人になりたい
私がこの三日間で学んだことはふたつあります。ひとつ目は挨拶の大切さと笑顔です。挨拶では「おはようございます」「お昼をいただきます」「お疲れ様でした」など、スタッフの人が他のスタッフ一人一人に声をかけていて、当たり前のことかもしれませんが、とても凄いことだなと思いました。挨拶をしなくちゃコミュニケーションは取れないし、挨拶をする事によって仕事とそれ以外のメリハリがつくのだと思いました。それと、笑顔でコミュニケーションを取ると、相手が笑顔になることを実感しました。ふたつ目はごまかさないという所です。私は仕事でミスをしてしまった時に、これは小さなことだから言わなくてもいいか、と思っていたけれど、素直に謝りました。素直に謝れば、これからは気をつけようと思うようになるし、大きなミスにつながらないのです。同時に仕事の責任感というものも学びました。

● 自信をつけた3日間に
3日間という短い間のインターンシップでしたが、その中で自分は誉められると自分に自信がつくということが分かりました。1日目は知らない場所で、知らない人達と3日間やっていけるか不安で、自分に自信がなかったけれど、誉められたりして、気がついたら自信にあふれていて、そのおかげで3日目は仕事を楽しめ、とても充実していました。私は将来、ここでの経験を活かし、挨拶をする、笑顔を絶やさない、誤魔化さず素直に謝る、ということの出来る社会人になりたいです。
プロフィール

毛受 芳高

一般社団法人アスバシ教育基金代表理事。NPO法人アスクネット設立者。地域と学校をつなぐ専門家「キャリア教育コーディネーター」を提唱し、認定制度の基礎を構築した。現在は、主に高校生に対して、心に火がつき、動き出すきっかけとなる体験=「心機動インターン」へ社会の教育投資を集める仕組みを目指している。

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